▲奈加さんの器/青、るり色、緑。
土に染み込み、落ちついた色合いになる。
▲「いただきます」/さっそくご飯を盛ってみた。
柔らかな風合いの器は、ごはんを一口運ぶたびに手に馴染んでいく。
▲朝採り野菜/山ウド、セリ。
赤い二十日ダイコンがかわいい。
▲凍み餅/白とピンクの愛らしい凍み餅。
油で揚げて、砂糖醤油などをサッとからめていただく。サクッとふっくら、なつかしい食感。
▲お手玉/ひとつひとつ丁寧に作られている。
やさしい手触り。おばちゃんの技の見せどころ。
いわはし館
直売所の一角に、「磐梯焼 一二三窯」安部奈加さんの
焼き物が置いてある。
手に取って器の感触を味わってほしい。
福島県耶麻郡猪苗代町三ツ和字村西65
TEL0242-72-0212
■営業時間 午前9時から午後5時
■定休日 4月〜11月(無休)
12月〜3月(水曜日)*年末年始は営業
お蕎麦を食べたあとのお楽しみ。
嬉し楽しい直売所が待っている。
会津には美味しい蕎麦屋さんがたくさんある。磐梯山のふもとにある猪苗代のいわはし館もその一つだ。
猪苗代町で管理、運営しているお店である。磐梯山牧場で育った会津地鶏を使った「祝言蕎麦」は名物といってもいいだろう。そのいわはし館の一角に農作物などの直売所がある。
猪苗代町振興公社の鈴木一幸さんにお話を伺った。「平成12年、8月にオープンしてまもなく、お店の一角で生産物の販売をしたらどうかという声があがり」フレッシュいわはし会が発足した。
「フレッシュいわはし会は地元の農家の方が会員になっています。現在86名の方に生産していただいています」冬場は手工芸品、夏場は野菜などの作物。それぞれの会員で成り立っている。きゅうりやトマトに生産者の名前を表示することで「この作物は私が育てました、どうぞ食べてみて下さいというメッセージにもなるのでしょうね」お蕎麦を食べたあとにほとんどのお客さんが直売所に寄るという。
「皆さんに喜んでもらい、満足してお帰りになっていただきたいです」鈴木さんやお店の方々の願いだ。
「実はわたくし、おしかけ弟子なんです」
直売所の入り口近くに、焼き物が置いてある。「磐梯焼 一二三窯(ひふみがま)」に従事する安部奈加(あべなか)さんが作ったものだ。青く落ちついた色合いの器に目がとまる。手に取ってみると柔らかく暖かい感触。素朴な手触りの土ものの器は日々身の回りに置いて使いたい。そんなことを思わせる焼き物だ。
奈加さんは以前、神奈川で保育士をしていた。猪苗代に帰ってからも保育士として暮らすうちに「自分の中で眠っていた夢がむくむくと目を覚ました」という。息子さんが消防士として自立したことを機に一大決心をする。「おかあさんね、焼き物をやりたいんだけど」息子さんは驚いたものの「いいんじゃない」と言ってくれた。「感謝しています。父と私と息子と3人で暮らしていますが、家族の理解がなければ出来ないことです」
こうして奈加さんは「磐梯焼 一二三釜」の門をたたく。ところが師匠である国分英徳先生はただ一言「弟子はとらない」何度行っても「自分は弟子はとらない」の一点張り。「一大決心した以上引き下がるわけにはいかない」奈加さん。「根比べでしたね」ある日師匠から言われた。「勝手にしろ。ただし給料はやれない」と。「嬉しかったです。勝手にさせていただきました」今年で3年目になる。先生は普段、口数が少なく恐い。「だからこそ誉められると嬉しいです」物知りでまるで「僧侶」のような方だという。「去年、ようやく名刺を作っていただき、体験教室も任せてもらえるようになりました」良かったですね奈加さん。
一日の終わりに思うこと。
子供たちとの関わりは現在も続いており、多忙な日々を送る。家の中のこともしっかりとやっている奈加さん。一日の終わりに思うことがある。
「何事もなく一日を過ごせたことに、人のささやかな言葉に感謝できる。貧乏ならではのしあわせってあるんですね」目をきらきらさせ、化粧っけのない頬をほころばせた。
毎日をエネルギッシュに、丁寧に過ごす奈加さん。まっすぐじんわりと心に語りかける焼き物を作って欲しい。