▲かやの実と「かやの実煎餅」
かやの木は早くて50年から60年を経てやっと実をつけるという。
「まぼろしの木の実」かやの実。
▲かやの実煎餅/包装
小判21袋入り 735円
大判25袋入り 1,050円
材料は小麦と砂糖とたまご。
そこにかやの実が入る。
▲作業風景
こうして一枚一枚焼いていく。
朝6時からと午前中にもう一回。
午後からは翌日の仕込みに入る。
▲窓からの眺め
窓のすぐ下に川が流れている。
覗き込めば、足もすくむ見事な渓谷だ。
▲お店の入り口
のれんに趣きがあるお店の外観。
芦ノ牧温泉 大竹商店
一つ一つかやの実を剥く。
一枚一枚焼き上げていく。
そんな根のつまる作業も全て「自分次第」。
覚悟を決めて仕事に取り組む3代目。
福島県会津若松市大戸町芦ノ牧峠516-5
TEL/0242-92-2376
■営業時間/8時から20時
■定休日/不定休
「かやの実煎餅」ひとすじ。
「うちはこの「かやの実煎餅」だけ作り続けているんです。どうです、食べてみて下さい。ついさっき焼き上がったばかりです」まだ温かいせんべいを手渡してもらった。ポリポリと音をたてながら感触を味わう。フワリとした小麦の匂いがする。同時にかやの実の滋味深い香りが口に広がっていく。遠い昔幼い頃、口にしたことがあるなつかしい味と香りだ。
「昔、この温泉地には旅館が2、3件しかなく、お土産として売れるものを作りたいということで、その当時手に入りやすかった、かやの実を使ってせんべいをと、考えたのが始まりだと聞いてます」
「このお菓子だけでお店がまかなえるのならそれにこしたことはない。自分自身がちゃんとしていれば大丈夫だと思っています」
身体を張ってここで生計をたて生活をして生きているんだ、という思いが伝わってくる。大竹祐一さん、3代目のご主人の言葉だ。2年前に先代のお父さんが亡くなり、その後お母さんと昔から一緒に働いている3人のおばさんとで、お菓子作りに励む毎日だ。
まぼろしの木の実。
かやの木からは、将棋盤や碁盤が作られる。その実は昔から漢方薬とした用いられ、喘息などによく効くという。「かやの実煎餅」は滋養に富んだ安心して食べられる焼き菓子なのだ。昔は手に入りやすかったかやの実だが、今は年々減ってきており「まぼろしの木の実」とも言われている。「うちでは、毎年かやの実を分けてもらっている所があります」そこのかやの木はたくさんの実をつけるが「その年によりあまり実らないこともあり」日本中探し求めることもあるという。
毎年10月末から翌年1月までに集まった量で一年の生産量がほぼ決まる。かやの実を使ったお菓子は全国でも珍しく「自分の知っている範囲では、うちと山形と岐阜にあるお菓子屋さんの3件です」と語る。
包装紙への込められた思い。
お菓子の包装紙からそのお店の思いを垣間みることがある。大竹商店の「かやの実煎餅」がそうだ。
落ちついた深い緑を地色に「かやの実煎餅」と黒文字で真ん中に書かれている。両脇にやはり黒文字で「ようこそ会津へ」「ふるさとの登録銘菓」「昔ながらの手づくり」と斜めに流れている。下方に野山と集落と鳥が描かれ、四隅にはバランス良く「かやの実」の小枝が散らばる。この小枝だけが白く浮き上がる。余白に黒い文字で「会津芦ノ牧温泉」の金色の丸いラベルが貼られている。一見、素朴な何の変哲もない包装紙だが手に取り見つめていると心に迫るものがある。時代は移り変わっても失ってはならないもの、受け継いでいかなくてはならないものへの静かな思いを感じるのだ。
今から46年前に作られた「かやの実煎餅」。初代のこのお菓子への思いが込められている包装紙である。