鶴乃江酒造
創業200余年。小さな酒蔵で母子が造る、凛とした味わい。
取材にうかがった6月半ば。タンクの中では、熟成のときを待つ酒が静かに眠っていた。
「会津中将」純米酒(1.8l)2,240円
「会津中将」知事賞受賞特上酒(720ml)5,000円
純米大吟醸「ゆり」(720ml)2,500円
純米吟醸「ゆり」(720ml)1,900円
銘柄名「中将」は「会津中将」と呼ばれた会津藩主・保科正之公にちなんで付けられた。
小さな酒蔵だからこそできる酒造り。
七日町通りに店を構える鶴乃江酒造は創業200余年、現在の蔵主で7代目になるという。
「蔵の見学も試飲もいつでもできますよ」
現在の蔵主の奥様で、取締役でもある林恵子さんがにこやかな笑顔で迎えてくれた。仕込みで忙しくなる12月から2月までは、奥まで見学することは難しいが、午後からなら大丈夫だという。
「地酒」の条件は、地元の米と水を使い、地元の人びとの手によって醸し出されることだが、鶴乃江酒造の酒もその条件にあてはまる。
種類によっては他の地域の酒米も使うが、中心になるのはあくまで会津産の酒米。水も昔から敷地内で沸くものを使っている。
酒造りにたずさわるのも地元の人達だけだ。酒造りを統括する最終責任者である杜氏も会津杜氏だ。会津では今は少なくなってしまったが、昔は会津杜氏の方が南部杜氏や新潟杜氏よりも多かったという。
造りで特徴的なのは、連続絞り機を使わず、今でも「ふね」と呼ばれる昔からの道具でしぼりを行っていることだ。「ふね」でしぼりを行った酒は雑味のないすっきりとした味わいに仕上がる。もちろん、連続絞り機を使うより時間はかかる。
木造瓦屋根の小さな店構え。10名程度の蔵人。鶴乃江酒造は決して大きな蔵ではない。だが、小さな蔵だからこそ、手間を惜しまずに酒を造ることができるのだろう。
母子で醸し出した酒「ゆり」。
店に置いてある酒は、手軽な価格のものから大吟醸のような高級酒まですべて試飲できる。
「酒の味を納得して買っていただきたいですから」
と恵子さん。味わいはどちらかと言えば、どっしりとしたタイプで、米の旨味が生きているという。
確かに純米酒「会津中将」は、米の旨味を感じるしっかりとした味。しかも雑味がなくすっきりとした口当たりで飲みやすい。
純米大吟醸「ゆり」。こちらはすっきりとした辛口。日本酒になじみの少ない人でも飲みやすい味だが、水のように淡い味ではない。やはり米の旨味があって、やさしい中にも凛とした味わいがある。
「ゆり」を造ったのは、恵子さんの娘さんのゆりさんだ。当時は長く女人禁制だった酒造りの世界に、女性の杜氏が誕生したことで話題を集めた。酒造技能士の資格を持つ恵子さんもゆりさんを手伝って、母子で醸し出した味わいだ。
七日町を訪れたら「会津中将」と白く抜かれた藍色の暖簾をくぐって欲しい。そして、会津の米と水を使い、会津の人びとの手によって醸し出された本物の地酒を味わって欲しい。
鶴乃江酒造
会津若松市七日町2-46
TEL(0242)27-0139
営業時間/AM9:00~PM6:00
定休日/無休
酒蔵の見学・試飲無料(団体の場合は要予約)
※仕込みの時期はPM~の場合もあります。