郡山全集

有限会社パス・アイ 渡部大樹さん、西山宜友さん

2013/07/31
passi

郡山全集|郡山へようこそ

071 有限会社パス・アイ アフラックサービスショップ郡山中央店
渡部大樹さん、西山宜友さん

南相馬市から郡山市へ

「南相馬市から郡山市に来て1年あまりが経ちました。郡山出店の際に新しく入ったスタッフたちも随分とたのもしくなってきましたね」
親しみのある笑顔でそう話すのは渡部大樹(わたのべおおき)さん。有限会社パス・アイ アフラックサービスショップ郡山中央店の店長さんだ。
有限会社パス・アイは、1991年に渡部さんのお父様が設立し南相馬市で金融・保険業を営んでいる。
震災、原発事故の後、息子の渡部さんが郡山市にアフラックサービスショップを開設した。
「事故直後は全員それぞれに避難しました。私は一ヶ月位してから南相馬の会社に戻り、お客様の安否確認などに追われました」
その時の南相馬の街は人影もなく野良犬が歩いている、現実ではない空想の世界のようだったと話す。
家族のいるスタッフはそれぞれ神奈川県や新潟県に避難しており、退職せざるを得なかったという。
「当初、仮事務所を福島市に構えましたが、お客さまが県内に多くいるので仕事上、位置的にも真ん中の郡山市がベストだろうと考えました。この場所で2012年の4月から営業をしています」
毎日、渡部さんを先頭に忙しく充実した一日を過ごす。
明るい声が社内に飛びかい、スタッフの笑顔が印象的な職場だ。

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渡部大樹(わたのべおおき)さん。
奥さまは、カメラが趣味。ネックストラップなど小物を作ることも好きだそうです。
「それを見守るのが自分の役目だと思っています。私自身は家で本を読んでいる時間が一番落ちつきますね」
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西山宜友(にしやまたかとも)さん。
国学院大学の学生だった頃にはバンドを組んでライブ活動をしていたそうです。
「自分はギターを弾いて曲を作っていました。みんなからは神主バンドと呼ばれていました(笑)」
年内に結婚する予定の彼女さんとは埼玉に避難している時に出会いました。一目惚れだそうです。
「とても美しい人で、自分にはもったいない位の女性です」
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渡部さんのお話

「私たち家族は事故直後は福島市へ、その後妻と息子と3人で親戚のいる群馬県高崎市に避難しました。今、私は福島市の借り上げ住宅に独り住まいです。妻と息子は高崎市に住んでいます」
当時、お子さんは幼稚園の年長さん。現在は小学2年生の元気な男の子だ。
「南相馬には大好きな友だちがたくさんいたので離れる時はつらかったと思います。幼稚園の友だちに会いたいと泣くこともありました。今は気の合う友だちもできて大人になってきましたね。だんだん群馬の子になって上州弁で話したりもします」
渡部さんは週末には家族に会いに群馬へと車を走らせる。
「毎週金曜日、少し早く帰らせていただいています。始めの頃は、福島へ戻る日曜の夜は切なかったですね。毎週見送ったあとに息子さんが駐車場で泣いているよって団地の人に言われたこともあります。今はもうテレビを見ながら手を振って、それもおとうさんとしてはちょっと切ないなあ」
日曜日の夜の東北自動車道、男性の運転する車が何台も走る。助手席には誰もいない。ああ、あの人もこの人も自分と同じなんだと渡部さんは思う。
おとうさんは家族がいるからがんばれる、当分の間花の一人暮らしと笑う渡部さん。遠く離れても支えてくれる奥さまがいればこその笑顔だ。

スタッフの西山さんのお話

若い頃、宮城県の仙台市で修業した谷田部さんは、出汁の旨味を大事にしている。そんな谷田部さんが、今そっと胸に抱えている思「あの日、津波は家の前まできました。もう夢中で車を運転しましたが、もしかしたら自分はあの時、人をはねていたのかもしれない」
忘れはしない壮絶な体験だと西山宜友(にしやまたかとも)さんはあの時をふりかえる。
西山さんは、南相馬市小高区、福島第一原子力発電所の北およそ14kmのところにある日鷲(ひわし)神社の28代目宮司をしていた。
「地震後は、お宮の被害状況を確認して写真を撮っていました。時計は午後2時46分で止まったまま。ローソク1本で余震がくるたびに火を消して朝まで過ごしました。次の日は水の確保をしていたのですが、あれよあれよという間に原発が爆発、みんなで逃げてそのまま帰れなくなりました」
西山さんはその後1年あまりを埼玉県で過ごした。一時は関東で就職をすることも考えたという。けれどご両親は自分たちの息子を福島県外に出すことを望んではいなかった。
「特に父親は神社を継ぐことができないにしても県内に残ってほしかったんでしょうね。そんな両親の気持ちを大切にしたかった。知人の紹介を受けてこの会社に巡り会えたのはそんな時でした」
西山さんは縁あってアフラックサービスショップ郡山中央店の開設時に新規スタッフとして入社することになる。
「上司にこの仕事は、お客さまの話を聞く姿勢が大切だと教わりました。私は神主をしていた頃、家を新築する地鎮祭などで年配の方々と接することが多かったんです。信心深い高齢者の方ともよくお話をさせていただきました。これまでの経験が今の仕事に少しでも生かされて良かったなあって思ってます」
何もかも初めてのことで学ぶことはたくさんある。けれどやったことがない仕事だから出来ないと言い訳はしたくない、そう西山さんはいう。

チームパス・アイ、
がんばろうと思う気持ちが心の支えです

「南相馬では父親がメインでしたが、ここでは自分のカラーを出していきたい。風通しを良くしてみんなで楽しくやっていきたいですね」
県内にいる多くのお客さまをどうフォローしていくか。
どう大事にしていくか。
それにはどう行動し思いを伝えたらいいか。
アフラックオフィシャルサービスショップとしてお客様に納得していただけるように努力していきたいと渡部さんはいます。
スタッフのほとんどが20代で、震災後まもなくお子さんが生まれた方や結婚をされたばかりの方もいます。
西山さんは、婚約中で年内に結婚する予定です。
原発事故がなければ、渡部さんたちはここにはいません。今のスタッフ全員とは一緒に仕事をすることもなかったでしょう。
この県はこれからどう再生し、変化していくのか。
先のことは誰にもわかりません。
けれどチームパス・アイのスタッフは、時にはへこたれながら、それでもそれぞれのがんばろうと思う気持ちを心の支えに歩いていくことでしょう。その思いの先には、大切な人たちの笑顔があります。

(有)パス・アイ アフラックサービスショップ郡山中央店

  • 郡山市桑野3-14-6 晴和ビル1F1号
  • 024-983-0061(代)

2013.06.25 取材 文:kame 撮影:watanabe

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